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『奇跡のリンゴ』(石川拓治、幻冬舎)

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無農薬でリンゴを作ることに成功した、青森の木村秋則さんを紹介したノンフィクション。
すごく売れているようなので、読んでみました。

リンゴというのは、農薬無しでは作れない果樹なのだそうです。
私は子どものころ長野県に住んでいたので、リンゴ農園をわりと身近で目にする機会がありましたが、
そういえばリンゴというのはいつも農薬がかかっていて、白くなっていたなぁという記憶があります。

無農薬でリンゴを作るというのは、かなり無謀なことなのだそうです。
不可能と思われる無農薬栽培を、どうすればできるか。
木村さんがいろいろと考え、観察し、トライ&エラーを繰り返していく様子は、
農業ってクリエイティブでサイエンスなんだな、ということを感じさせてくれて、ワクワクしました。

木村さんの試みは成功するまで10年近くかかり、その間、一家は困窮のきわみに陥ります。
周りのリンゴ農家からも「変人」扱いされます。
それでも、義理の両親(木村さんは婿養子)や奥さんの理解を得られているので、
そのあたりは木村さんの人柄や情熱のたまものなのかな、と思います。
とても「癒しキャラ」のようですし。
でも、娘さんが3人いる…と書いてあったかな。
そのお嬢さんは極貧の生活をどう思っていたのか、あまり描かれていないのが気になりました。
たぶんそのお嬢さんたちは私と同世代なので、子ども時代は景気の良い80年代でしょう。

この本は、NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」の番組が元になっているようです。
ノンフィクションとして物足りないと思ったのは、「感動もの」に仕上がりすぎていて、
けっきょく木村さんの畑からはどのくらいの無農薬リンゴが取れるようになったのか、
それがどのくらいの値段で売れているのか、木村さんの方法は他の農家に広がっているのか…、
などなど、いろいろな疑問が涌いてきてしまうということです。
木村さんのお仕事への冷静な「評価」の部分を、もう少し突っ込んでほしいな、と感じました。

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